2006.01.22

過度なITベンチャー批判はいかがなものか

【ライブドア事件の雑感 其の1】

 またまた更新をサボっていまして恐縮なのですが、年明け早々、クルクルクルクルクル回転していたかと思えば、たいへんなことになってしまいましたね。
 ホリエモン、ライブドア事件のことです。
 テレビでもいろんな論客たちがいろいろとコメントを出していて、日本中ライブドアの話題で持ちきり。近鉄球団買収のパフォーマンスから一躍時の人となったホリエモンですが、ついにニッポン・ジャックを達成してしまったという感があります。もちろん、今回は負の意味でのことですが。
 まだまだ事件捜査中の段階であまり多くのことを論評するのは早計すぎるとも思うのですが、ホリエモンの愛したネットやメディアの即時性というものには凄まじいものがあって、とても歯止めの利くような状況ではありません。
 そこでニッポン提言としても、現時点での雑感ということでコラムを書かせていただくことにしました。
 以下テーマで3回連載の予定です。

1.過度なITベンチャー批判はいかがなものか
2.投資家には冷静な態度を
3.テロとの戦いよりマネーゲームとの戦い

 第1回目の今回は、「過度なITベンチャー批判はいかがなものか」というテーマです。
 ライブドア事件をきっかけにヒルズ族を批判したり、ITを批判したり、ベンチャーを批判したりと、とにかくなんでもかんでも「ライブドア風」のものは良くないという風潮になってしまっていますが、注意しなければならないのは、ライブドア風とライブドアとは似て非なるものだということです。
 事件の詳しい真相については捜査を見守るしかない状況ですが、現時点で報道されている情報だけを見てもライブドアの粉飾決算は非常に悪質で、刑事罰も免れないところだと思います。
 しかし、事件を引き起こしたライブドアと同じビルにいるとか、同じような業種であるとかということだけで、十把一絡げに良くないというような風評は厳に慎むべきです。
 わたしは基本的に現在の日本経済の好景気にITベンチャーの果たした役割は非常に大きいと評価しています。
 従来型のスタイルではモノが売れないという時代にネットが果たした役割というものはたいへんに大きかったわけですが、リスクをとってネット市場を開拓していったのは、既存の大手企業ではなく、彼ら新興のITベンチャーだったわけです。
 また、彼らの起業家マインドというものが、日本社会に果たした好影響というものも決して小さくはなかったと思います。
 前者を「市場の構造改革」と言うならば、後者は「思考の構造改革」と言うことができるでしょう。
 これらが合わさって現在の日本経済の復活、好景気があるのだと言っても過言ではありません。ベンチャーが開拓した道を既存大企業が走り出したことで日本経済の復活があったわけです。
 もちろん、幾つかのITベンチャーにはライブドアと同様の疑惑が持たれているようなので、これらはキチンとした調査、捜査がされるのを待たなければいけませんし、違法ではないにしろ脱法的な株式分割を利用した株価操作などについては断固とした批判がなされなければなりません。ですから、手放しでもてはやす必要はまったくないわけですが、だからと言って何の根拠もなく何でもかんでも良くないというような極端な批判には賛成できません。
 既得権益を奪われた守旧派勢力のような人たちが、「そらみたことか」とばかりに、「けしからん」を連発する姿に、見苦しさを感じてしまうのはわたしだけでしょうか。

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2005.08.28

ついに決戦!

 なんとも久々の更新となってしまいました。
 長い間サボってしまっていたのですが、今回から復活です。
 復活第1回目のコラムは、公示前から既に盛り上がってきている選挙戦のことではなく、実は格闘技のことなのです。
「PRIDE GP 2005 決勝戦」

 ついに今夜、ミドル級世界最高峰が決します。
 そして、このイベントで同時に開催されるベビー級タイトルマッチ、
「エメリアーエンコ・ヒョードル対ミルコ・クロコップ」
 ついに待ちに待ったカードが実現します。
 地上波では2日後の8月30日に放送される予定ですが、わたしは当日スカパーで見るつもりです。
(仕事の都合で残念ながらリアルタイムでは見れないので、タイムシフト放送で見るつもりです)
 PRIDEや格闘技にあまり関心を持たれていない方も、一度だまされたと思って30日の地上波放送を見てもらえればと思います。
 そこには、極限まで鍛えぬいたアスリートたちのしのぎを削る戦いの最高峰のドラマがあるはずです。

 ちなみに、PRIDEサイトで、PRIDE選手に勝敗予想をしてもらうインタビュー企画があったのですが、
美濃輪選手が占うミドル&ヘビー級二大決戦!

 この美濃輪選手のページはウケました。
 ジャンクスポーツなどでも稀代の天然ッぷりを発揮しまくっている彼ですが、本当に素敵です。

 わたしとしては、予想というわけでなく、グランプリではアリスター選手に頑張ってもらいたいなーっという気持ちが強いです。
 4人の内3人までがブラジル人で、しかも内2人がシュートボクセという構成になってしまいましたから、アリスター選手には元祖格闘王国オランダの意地を見せてもらいたいと思います。
 ヘビー級の方は、難しいです。
 気持ち的には、苦心の末ようやくヒョードルとのタイトルマッチにこぎつけたミルコを応援したいところです。
 しかし、あのヒョードルの無敵のスタイルをどう崩せるのか…。
 確かにヒョードルに穴があると立ち技での一撃ということにはなるのですが、ヒョードルの立ち技の進歩には目覚しいものがあります。去年の年末のノゲイラ戦では、あの立ち技巧者のノゲイラを立ち技で圧倒していました。
 ミルコが立ち技でのKOを狙うということは、自ずとテイクダウンされるというリスクを負うということを意味します。確かにミルコのグラウンドの進歩にも目を見張るものがありますが、それでもやはりグラウンドでのヒョードルのアドバンテージには揺るがしがたいものがあります。
 わたしはこの戦い、集中力の差が勝敗を決するだろうと思います。
 その意味で冷静沈着なヒョードルが勝つ公算が強い。
 しかし、ミルコが冷静さを保ちつづけ、それでいて一気に攻勢に出る思い切りの良さをうまくコントロールすることができれば、ハイキックKOの勝機も十分にあり得る。
 ある意味では、観戦者の集中力が問われる一戦になるのではないかと予想します。

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2005.02.14

識者の経済知識って

 昨日放送した『サンデープロジェクト』を見ました。
 ニッポン放送のTOB問題で渦中のヒト、ライブドアの堀江社長が出演していました。
 今まで新聞などの報道をあまり注視していなかったので、「ニッポン放送がフジ・サンケイ・グループの実質的な持ち株会社」であり、「ニッポン放送がフジテレビの22.5%の株式を保有していて、かなりの支配力を持っている」ということ。しかも「ニッポン放送がフジテレビ株をあと2.5%を買い足して25%にすれば、フジテレビを実質子会社化できる」というような状況にあることを初めて知りました。
 こういう状況を前提に、「ライブドアがニッポン放送の株式35%を買い占め、筆頭株主となり、フジテレビに対し業務提携の申入れをしている」、と。そこにライブドアは「テレビとITとの融合」という戦略を描いているということ。このような基本的な大まかな構造を理解することができました。
 その意味において、サンプロの放送は有益でした。
 また、キャスターの田原氏やレギュラー識者からの質問に対する堀江社長の回答は非常に明快で、きちんとした知識と戦略に裏打ちされているように思いました。
 しかし、非常に疑問に思ってしまったのは、田原氏やレギュラー識者の経済知識にこと。わたし自身が経済の知識は素人レベルなので、あまり言えた義理ではないのですが、それにしても専門家然として出演している彼らの水準がかなりお粗末なものであることが露呈してしまったように思います。
 まあ、多少ひいき目に見れば、堀江氏が先進的経営とM&Aの専門家なのに対し、識者の方たちはどちらかというとマクロ経済学に座標をおいているのであろうし、田原氏の専門はやはり政治なのだろうから、ある程度の知識の違いは仕方がないのかとも思います。しかし、テーマが先に決まっているのだから、もう少し下調べするなり出来なかったのかなーっという印象ですね。
 それから、堀江氏についても一言あるとすれば、もう少し丁寧に説明した方がいいのかな、と。
「こんなことも知らないのか」
 というような、相手を見下したようなぞんざいな態度は、決して視聴者にいい印象を与えませんから、それでは彼の説いている戦略に対し市場からの理解を得るということにも繋がらないだろうと思います。ひいて言えば、彼の会社の株主利益に背くものともなりかねません。
 そういう意味において、年始のサンプロに出演したときの木村剛氏の発言や態度は、非常に好感の持てるものだったと思います。
 稚拙な暴論を繰り広げる森永卓郎氏に対し、木村氏はおそらく怒りを通り越して呆れ返っていたと思うのですが、感情をおさえ、冷静かつ理論的に正論を展開しました。
 木村氏の発言は以前から非常に思慮の深い安定感のあるものだったと思いますが、この回は日本振興銀行の社長就任を受けて、経営責任というものを特に意識して振舞っていたように思います。
 まあ、いずれにしても経営者も識者も切磋琢磨して、知識や戦略、品位や精神といった総合的なレベルを上げていかなければ、日本という地盤自体が沈下していまうわけで、わたしたちも見る目を養っていかなければいけないと思いました。

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2005.01.06

国家戦略について考える

 明けましておめでとうございます。
 さて、今日の日経の社説が非常に素晴らしいので、ぜひお読みいただきたいと思います。

 角栄流の地元利益重視は多くの政治家に引き継がれ、バブル崩壊で加速する。田中氏以降の政治のありように根差した地元住民への“深情け”が、財政赤字の膨張と予算配分のゆがみの大きな原因といえる。

 深情けは今も色濃く残り小泉改革の妨げになっている。まず時間がかかる。痛みを伴う改革には漸進主義であたるのが深情けだから当然だ。歳出削減も関係者に配慮して少しずつ進めるので、はかどらない。

 また、予算配分のゆがみは残る。恨みを買わないよう予算項目ごとの増減幅に大きな差をつけないからだ。必要性が疑問視されながら公共事業費の約17%を占める農林水産土木費は来年度、4.3%の減少にとどまる。この調子だと10年たっても4割程度しか減らず、なお来年度の空港整備費の5倍程度と多い。

 しかし財政改革は急務だ。国と地方の債務残高のGDP比は160%強と先進国で最悪。高齢化による貯蓄率低下で国債の国内消化が難しくなれば、金利が上昇し経済が大混乱を来す。その時期は切迫している。中国との競争で賃金が伸び悩む中、大幅な個人向け増税は容易でない。また社会保障や災害対策などの支出は増えていく。となれば優先度の低い予算を大幅に削るしかない。

 深情けや漸進主義で事に当たるのはもはや限界だ。政府が何をし、何をすべきでないかという「政府の役割」を根本から見直し、再定義する作業が今、必要なのではないか。

 この点で参考になるのはカナダである。93年にクレティエン前首相が就任したころ、財政は火の車だった。同首相は歳出削減を中心に赤字を減らす方針を打ち出す。そして少数の上級閣僚による特別委員会を設け、6つの基準に照らしてあらゆる歳出の必要性を吟味した。

学びたいカナダの知恵

 6つの基準は(1)国民に求められているか(2)政府が提供すべきか(3)州政府に任せられないか(4)民間に移せないか(5)効率を高められないか(6)財政難の中でもなすべきか――である。これが功を奏し、カナダは97年度に連邦政府の財政収支が黒字に転換、その後も黒字を続けている。

NIKKEI NET:社説・春秋 ニュースより

 政府の役割を再定義する。
 そういうドラスティックな国家戦略の転換こそが必要なのだと思います。
 そうなれば少なからず痛みが生じる。不利益を被る既得権者からの反発があり、現行の自公政権はそういう方向性を示すことができずにいるわけです。
 一方、野党に目を転じた場合はどうでしょう。民主党が示しているマニフェストなども、結局は労組などの支持基盤への配慮から、さしてドラスティックなものにはなっていないのではないでしょうか。
 しかし、もう時間がない。すぐに大改革に手をつけなければ日本の財政は破綻してしまいます。少子高齢化に人口減少。もう待ったなしのところまできているのです。

 アイデンティティ。自己同一性。
 組織をひとつの人格として考えるとき法人と呼びますが、国家をひとつの人格として考えた場合、今の日本の状況は自己同一性を失っていると言わざるを得ない。
 言うなれば精神分裂の状態にあるのではないでしょうか。
 民主主義の精神は十分に尊重されるべきものですが、それによって国家運営が機能不全に陥ってしまっては元も子もない。国家自体が破綻してしまえば、民主主義を実践する土台すらも失われてしまうわけですから。

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2004.12.10

理解に苦しむ年金流用の継続に怒りの声を

 来年度もまた年金保険料の流用が続くのだそうです。

年金事務費: これまで通り保険料財源継続へ

 社会保険庁は8日、年金保険料の流用だと批判されていた年金事務費について、公用車買い替え費などを「内部管理事務経費」として一般財源に戻す一方、保険料徴収や年金給付など保険事業に直接かかわる部分約1200億円はこれまで通り保険料を財源とする特例措置を続けることで、財務省と最終調整に入った。決着は来週の閣僚折衝まで持ち越されそうだ。
MSN-Mainichi INTERACTIVE 話題より

 本来なら、そもそもこのようなことが行われていること自体が異常極まりないことなのです。
 仮にも「保険料」とうたっているお金が、社会保険庁の経費として恒常的に(しかも適法に)使い込まれているという事実は、正に言語道断の自体と言う他はありません。
 保険会社であれば、保険料として集めるお金は、保障費用として積み立てる「純保険料」と事務経費として使用する「付加保険料」とに厳然と分別管理がなされており、各保険会社は付加保険料を如何にして圧縮して顧客利益を増大させるかしのぎを削っているわけです。
 それが、社会保険庁は公的な年金保険料として積み立てておくべき、保障費用を野放図に経費に流用して、現に保障費用は目減りし、枯渇しようとしているわけです。
 とにかく、わたしはこの件に関する限り、財務省の主張には断固として反対です。
 もちろん、社会保険庁にはコスト削減策を抜本的に見直す必要があります。しかし、それができていないからといって、保険料からの流用を続けさせて良いというのは、まったく理解に苦しみます。
 まずは、保険料流用はストップする。改革をするには、すべてはそこからだと思います。
 その上で、公的年金事業は民営化なり、民間保険会社への委託なり、抜本的な改革を行うべきだと思います。

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2004.11.27

農業助成金についての考え方

 バナナの関税ってどれぐらいかご存知でしょうか?
 実は、バナナの関税には10%と20%の2種類があるんです。
 2種類の税率がどうやって使われているかというと、これがなんと季節で切り替わる。
 夏は10%、冬は20%。
 どうやらこれは、ミカンやリンゴなど冬の出荷が多い日本の果物農家を保護するための制度らしいのです。
 つまり、冬にバナナが安いとミカンやリンゴの売上が落ちる、と。
 なんだか分かるような分からないような、ちょっと釈然としない感じです。
 では、日本人の主食、コメの関税はどうなっているのでしょうか?
 コメの関税は複数の種類があるというようなことはありませんが、物凄く高い。
 なんとコメの関税は490%です。
 例えばカリフォルニア米が10kg1000円だとすると、これに4900円もの関税がつき、5900円にもなってしまうのです。
 そのおかげか、コメの自給率は100%です。

 現在日本は、FTA戦略を促進するために、農産物の関税引き下げがいよいよ避けられない情勢となっています。
 中国のFTA戦略には目覚しいものがあり、着実に成果をあげつつあります。
 対して日本はと言えば、農産物を除外して締結したシンガポールとと、オレンジ果汁や豚肉で農林族ともめにもめてようやく締結にこぎつけたメキシコとの2ヶ国のみ。
 明らかに出遅れています。
 やはりボトルネックになっているのは、農業問題なわけです。
 食糧自給率は国力を維持する上で非常に重要なものです。
 食糧自給率というものは、国際社会での発言力というものの背景に大きな影響を及ぼす重要なファクターであると考えられます。
 もちろん、これは鎖国をして国際社会から孤立するような方向性を想定してのことではありません。
 しかしながら、いざとなったら自国で食料が賄えるという要素は、国際社会で日本が活動していく上で、やはり重要な意味を持っているわけです。
 では、日本の食糧自給率がどれぐらいかと言いますと、40%です。
 これは先進7ヵ国では最低です。
 少なくとも現在の水準は維持しなければいけない。できれば、少しずつでもいいからこれを上昇させていかなければいいけない、というのが日本の食糧自給率の現状です。
 食糧自給率は国内農業の保護政策、とりわけ関税によって維持されています。
 具体的には輸入農産物に高い関税を課すことによって、価格競争力に劣る国内農家を保護しているわけです。
 しかし、FTAを進めていくためには、この関税を引き下げる、或いはもっと進んで関税を撤廃していかなければならない。
 ここに、大きなジレンマがあるわけです。 

 この問題の解決策として、国内農家への助成金制度というものが言われていますが、わたしはこの制度について非常な疑問を持っています。今回言いたいのは、実はこのことなのです。 
 これは、具体的には「直接支払い制度」(土地利用型の作物と面積に応じて農家に助成金を支給する政策)と言われているものです。
 つまり、関税を引き下げて、安い輸入農産物が入ってくるようにはなるが、国内農家には助成金を直接出して保護をしようというわけです。
 一見良さそうに思えるこの制度ですが、しかし、考えてもみてください。
 たとえば、先ほどのコメの例で言いましょう。
 日本米は、現在だいたい10kg5000円ぐらいが相場です。
 先ほどの10kg1000円のカリフォルニア米が、関税が無くなってそのままの値段で売られるようになったとしましょう。
 さすがに、1000円に対して5000円では日本米はなかなか売れるものではありません。
 そこで日本米も1000円まで値下げをして販売したとします。
 仮に日本米の原価が3000円だったとすると、10kg売れる度に、2000円の損失となる、いわゆる逆ざやとなるわけです。
 売れば売るほど損が出る。それを国からの援助をもらうことで穴埋めし、生計を立てていく。
 果たして、このような状態が健全な産業といえるでしょうか?
 わたしは、少なくとも逆ざやではなく、利ざやが1円でもある状態でなければ、とても健全なものにはならないと思います。

 そこで、日本の農業が生き残る道には2つの方向性があると考えられます。
 1つは、「高級ブランド化」です。
 たとえば、ブランド米として知られる魚沼産コシヒカリは、10kg8000円でも売れています。
 有機・無農薬など、日本産の付加価値の高い農産物は価格が高くても非常に強い競争力を持っており、国産の農産物の一部は中国などにも輸出され、珍重されています。
 こういった高級ブランドとして通用する高品位の農産物の生産に特化することによって、低価格の輸入農産物との棲み分けをしていくということです。
 そしてもう1つの方向は、「合理化・大量生産」です。
 確かに日本の人件費は中国などと比べると高く、価格競争力に差が出来てしまうのは仕方がないようにも思えるのですが、しかし、果たして日本の農業はこれ以上出来ないというぐらいにコスト削減や効率化を突き詰めたものなのでしょうか。
 わたしは、必ずしもそうではないと考えています。
 関税などによってお国からの過保護を受けつづけてきた日本の農業には、無駄も多いのではないかと思うのです。
 例えば、株式会社による農地取得が規制改革特区での焦点になっていますが、これなどは合理化・大量生産による改革を推し進めるエンジンになるものだと考えています。
 兼業農家で仕方無しに続けているような農家などから、株式会社が農地を買い集め、合理的な大量生産をすれば、必ずコストを削減して効率的な農業経営ができるはずです。
 例えば、原価3000円だったものを1500円にまで落とす。品質面では「高級ブランド」程には及ばないまでも輸入品よりは優良なものを作り、これを2000円で売る。
 この場合、利ざやは500円。必ずしも大きくはありませんが、これを大量生産・大量販売していくわけです。
 こういう方向性でいけば、やはり1000円で売られる輸入農産物とも棲み分けをしていくことができるはずです。
 「高級ブランド」に対して、「準高級ブランド」といったところでしょうか。
 いずれにしても、これらが国内向けに通用するのであれば、当然それは輸出品としても通用するはずです。
 輸入・輸出が拮抗してくれば、食糧自給率は100%。輸出が増えれば150%や200%とすることもできます。
 お互いに関税がない、自由貿易協定での農業というものは正にこうゆうものだと思うわけです。

 つまり、商品としての国際競争力を高める以外に日本の農業の生きる道はないと思うわけです。
 このことを大前提として、「直接支払い制度」はあくまで「過渡的」或いは「補助的」な保護制度と位置付けなければいけないと思うわけです。
 例えば、売値が2000円に対して原価3000円だとすれば、1000円の逆ざやです。
 これを原価を削減し、2500円にまで下げられたとします。それでも500円の逆ざやです。
 この状態でも農業経営が続けらるように、例えば10kg売れる度に1000円分の補填が得られるような程度の「直接払い」を導入したとします。
 そうすれば、原価2500円のものを2000円で売ったとしても、プラス1000円の補填がありますから、500円の利ざやが発生する勘定となります。
 しかし、このような過保護な援助が無期限に続けられるようなことがあってはいけません。
 例えば、この1000円分の補填は1年ごとに100円ずつ削減されていく、というようなかたちが望ましいでしょう。
 農家はその間に、原価削減などに取り組むわけです。
 例えば、1800円にまで原価が削減できたとすれば、2000円で売った場合、補助金がなくなったとして200円の利ざやを得ることができます。これに更に200円分の補助金がついて、実質利益400円。例えば、このような程度のものであれば、補助的な制度として無期限に継続させてもいいでしょう。
 もちろん、「直接支払い制度」は取引ごとに給付するものはありませんから、ここでの例えはあくまでそういう金額相当になるように支払うという意味です。ですから、逆ざやを脱却するということは非常に重要な意味合いを持ちます。
 逆ざやでも農業経営を続けられるように、大幅な援助をするというのが「過渡的」保護。
 逆ざやは脱却したが、薄利な状態でも農業経営ができるように助成をするのが「補助的」保護というわけです。

 農業改革の方針はこのような考え方で進めるべきだろうというのが、わたしの考えです。
 とくに真新しいことや奇抜なことを言っているつもりはありませんが、こういう基本的な方法論があまりにも語られていないというところに大きな問題があるのではないかと思います。
 FTAによって貿易を活性化させるという経済の基本戦略についてもそうです。
 とにかく、この国に足りないのは「国家戦略の全体的なビジョン」です。
 政治がこういうことをきちんと語らないのも問題ですが、わたしたち一人一人がちゃんと当事者意識をもって考えていくということも非常に大事なことなのだとわたしは思います。

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2004.11.26

モラルの低下というとても難しい問題

 公金を私物化する公務員の不祥事が後を絶ちません。
 もちろん、公務員全員が腐っているなどというつもりはないのですが、全体的にモラルが低下しているということは間違いないのないところだと思うのです。

 例えば、わたしの甥の通う公立小学校の担任教師は、ちょくちょく遅刻をするのだそうです。
 また、こちらは公立ではありませんが、先日は中学校教諭の体罰事件がありました。

同志社中教諭が生徒に体罰 「いじめ抜く」と暴言も

 京都市の同志社中学(丹沢登志郎校長)で10月、保健体育の男性教諭(62)が体育祭練習中に、3年生の女子生徒の頭をたたくなど体罰を加え「おれの前に姿を見せたらいじめ抜く」などと暴言を浴びせていたことが25日、分かった。
 止めに入った3年生の男子生徒も振り払われて転倒。いずれもけがはなかったが、同校は教諭を厳重注意し、生徒と保護者に謝罪した。
 同校によると、教諭は体育祭前日の10月6日午前、1年男子の競技をマイクを使って指導していた。音量が下がったため放送席に注意した際、通り掛かった女子生徒に「声が大きくてうるさい」と言われたことに立腹。生徒の頭をたたき、髪の毛を引っ張って頭を揺さぶったという。

山陰中央新報:FLASH24:社会・科学より

 わたしは、基本的には「しつけ」のための体罰自体に反対はしません。
 しかし、だからといって教師が身勝手な理由でかんしゃくを起こして手をあげるというのは、これはまったく認められません。
 雨が降ると学校を休んでしまう教師。
 女子児童にセクハラをする教師。
 「立ち歩き」を止められない教師。
 わたしが子供の時には考えられないほど問題教師の数が増加しています。
 これでは、教員全体のモラルが低下していると言わざるを得ない。
 そうであれば、もはや「しつけ」のための体罰を容認することも出来なくなってしまいます。

 モラルが低下しているのは、公務員や教員だけではありません。
 雪印。三菱自動車。UFJ銀行。西武鉄道。
 そして、今度は環境対策という非常に公共性の高い、正に CSR(企業の社会的責任) に属する分野の事業において、卑劣な詐欺事件が発覚しました。
 当事者は日本を代表する財閥系の大企業、三井物産です。

三井物産: 排ガス浄化性能を偽る 装置2万台、交換へ--1都3県ディーゼル車規制

 三井物産は22日、東京都から承認を受けて販売したディーゼルエンジン向け粒子状物質除去装置(DPF)の試験データをねつ造していたと発表した。DPFは1都3県で条例化されている排ガス規制に対応するため、大型トラックなどに取り付ける装置。粒子状物質の除去率が基準値の7~8割しかないにもかかわらず、基準値をクリアしたとの偽りのデータを提出し、都から承認を受けていた。同社は同装置の製造・販売から撤退、03年以降販売した約2万1500台について、無償で代替品を提供するなど対応する。

MSN-Mainichi INTERACTIVE 企業より

 まったく、日本はどうなってしまったのか。
 どうすればいいのか。
 悲しくなってしまいます。

父に反発、母に暴力…両親と姉殺害で逮捕の28歳男

 茨城県土浦市の自宅で両親と姉を殺害したとして逮捕された飯島勝容疑者(28)が、土浦署の調べに対し、厳格な父親への反発から「小学生のころから母親に慢性的に暴力を振るっていた」と供述していることが25日、わかった。
 同署の調べでは、勝容疑者は地元の私立高校を卒業した後、コンピューター関係の専門学校に進学したが、4か月で退学。ガードマンなどのアルバイトも長続きせず、家に引きこもった状態だったという。
 親類の女性によると、市立博物館副館長の父親一美さん(57)は厳格な性格。就職するよう説得を続けて勝容疑者と口論が絶えず、妻の澄子さん(54)が取りなしていた。

YOMIURI ON-LINE / 社会より

 ニートという、職業にも学業にも職業訓練にも就いてない、就こうとしない若者が急増し、社会問題となっている最中にニートの引き起こしてしまったこの事件。
 問題は複雑で、非常に難しい。
 しかし、わたしが強く思うのは、問題の根源は、教育にあるのではないかということです。
 学校がおかしいということ。若者がまっとうに社会に出られないということ。
 教員、家庭、いろいろと根は深い。
 しかし、ずっと手をこまねいてばかりいるわけにはいきません。
 どうすればいいのか、皆が問題意識をもって考えることがとりあえず必要なのだと思うのです。

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2004.11.20

北朝鮮問題の総合的戦略

 そろそろ腹を括って戦うべきときが来ているのではないでしょうか。
 北朝鮮のことです。

北朝鮮の態度は高圧的だった

日朝協議の詳細判明 北、国交正常化へ高圧的態度 日本側は終始防戦

 平壌で先週、開かれた日本人拉致問題に関する日朝実務者協議の詳細なやりとりが十九日、政府の内部資料から明らかになった。北朝鮮側は高圧的に拉致問題の幕引きと、国交正常化交渉の再開を迫っているのに対し、日本側は終始防戦に追われ、「北朝鮮なりに努力がみられた」とする外務省の説明と、協議の実態とはかけ離れていることが浮き彫りになった。(産経新聞)
gooニュース

 そもそも拉致は明らかに国家ぐるみの工作であって、北朝鮮の独裁体制を考えれば、それを指揮したのは金正日国防委員長以外にはありえないわけです。その金正日体制の北朝鮮政府を相手にいくら通常の「外交交渉」をしたところで、拉致問題の抜本的解決など到底できるわけがありません。
 非人道的な現行の独裁政権は、最終的には「瓦解」に追い込む必要があると考えるべきでしょう。
 問題はどのようにして政権を瓦解させるか、そしてその後にどのようにして民主的な国家体制として「復興」させるのか、という「総合的戦略」にあると思います。
 とりあえず北朝鮮が認めていた拉致被害者と家族を無事に帰国させることができました。
 ブッシュ大統領が再選され、今後4年間のアメリカの体制も確定しました。
 となれば、これはもうそろそろ動くべきときではないかと思うわけです。
 その時には、当然、日本の経済制裁は行うべきだと思いますが、しかし、日本が単独でそれだけをやっても仕方がない。
 重要なのは総合的戦略です。
 イラクのように世界の警察を自認するアメリカに単独行動をさせてはいけない。
 しかも、この問題では日本は明らかな当事者なのです。
 日米を機軸に総合戦略を組み立て、それに韓中露、そして国連を絡めながら、動いていく必要があると考えます。
 手法は色々とあると思いますが、基本的には経済制裁で体制を瓦解させることができるだろうと思います。
 もちろん、核とミサイルには十分な注意が必要です。
 しかし、その上で、ある程度のリスクは、もう腹を括ってかかるしかない。
 ならず者国家の珍妙な脅しにいつまでも世界が振り回されつづけるわけにはいかないのです。

 ブッシュ大統領とは盟友関係にあるとされる小泉総理ですが、願わくばブッシュ大統領との戦略対話を実現し、早々に総合戦略の立案と実行に取り掛かって欲しい。
 小泉総理が歴史に名を残すことに腐心するのであれば、それはなし崩し的な国交正常化ではなく、このような「瓦解→復興」のプログラムにこそ力を注ぐべきだと、わたしは思います。

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2004.11.12

首相の横暴を放置してはいけない

 果たして、こんな横暴な発言が許されていいものなんでしょうか。

党首討論: 非戦闘地域の定義は「自衛隊が活動する地域」--小泉首相  ◇「イラク」巡り党首討論

 ◇岡田代表「非戦闘地域の定義は」/小泉首相「自衛隊が活動する地域だ」

 小泉純一郎首相と民主党の岡田克也代表による党首討論が10日、参院国家基本政策委員会で行われ、イラクへの自衛隊派遣延長問題を中心に議論した。岡田氏がイラク復興特別措置法で定める派遣要件の「非戦闘地域」の定義を聞いたのに対し、首相は「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と説明。「現地のみなさんから『一番苦しい時に助けてくれた』と評価を受けるような活動を今後も展開したい」と述べ、派遣延長に強い意欲を示した。

MSN-Mainichi INTERACTIVE 政党
より


 「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」
 これはまさに小泉首相の本音なんでしょうが、こういう滅茶苦茶なことを国家の長が国会という場で平然と語って、それで許されてしまうというのは、もはや国会は法治国家の民主議会の意味を成していないという他はないです。
 アメリカとの同盟関係、とりわけブッシュ大統領との信頼関係に基づいて、自衛隊派遣というものが為されているのであり、法的な位置付けなどは只のこじつけでしかない。だから、「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」でいいんだというのが首相の論理になるのでしょうが、これはあまりにも酷い。
 イラク特措法では、自衛隊は「非戦闘地域で人道復興支援活動をする」ということになっており、彼らには戦闘状態に対応するような装備も指示・命令系統もないわけです。もちろん、自衛隊の方々は、日本のために命をかけるという使命感を持って活動をされていると思いますが、こんな状態で、戦闘に巻き込まれて、右往左往した挙句、死んでしまうというようでは、死んでも死にきれないと思います。
 野放図な期間延長ではなく、イラク特措法と自衛隊の活動のあり方の根本を、しっかりと議論し、きちんとした法的根拠に基づいてかの地での活動に当ってもらうべきだと、わたしは強く思います。
 そして、不条理な論理を振りかざす首相の横暴には、断固として抗議していかなかればならない。先人たちが苦労をして作り上げてきた法治国家、民主政治を守るためには、今回のような首相の横暴は許してはいけないのだと思います。

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2004.10.30

これで慣らされてしまうのはちょっとおかしい

 どうして今回はメディアの取り上げ方が大きくないのか。
 まず、このことがすごく引っかかっています。

イラクで香田さんとみられる遺体 政府確認急ぐ

 イラクで福岡県直方市の香田証生(こうだ・しょうせい)さん(24)が武装グループに拘束された事件で、政府は30日未明、香田さんとみられる遺体が見つかったことを明らかにした。イラクに駐留する米軍が29日午後(日本時間30日未明)、バグダッドの在イラク日本大使館に連絡した。イラク戦争に絡んでこれまで日本人は外交官2人、フリージャーナリスト2人が殺害されているが、香田さんと確認されれば、人質事件では初の犠牲者となる。

asahi.com : 社会より


 とうとう、こういう事態になってしまいました。
 わたしが一番嫌だと思うのは、今回の事件によって、「テロリストに人質をとられ、自衛隊撤退を要求される」→「要求を拒否する」→「人質が殺害される」という流れが当たり前のようになっていってしまうことです。
 その意味で、犠牲にあった香田さんには非常に申し訳ないのですが、それでもやはり、
「あまり同情の余地がない。行く方が悪い」
 と感じさせてしまった点は、残念ながらこれは非常にまずかったなあと思います。

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